【部活】言いたいことを上手に伝える対話の技術、『アサーション』という自己主張方法とは?

こんにちは。部活カウンセラー未来です。
今回は、部活のメンタルづくりに役立つ話です。

部活生のみなさんは、親や友達、学校の先生や部活の顧問・コーチなどに、「自分の言いたいこと」を恐れずに伝えることができていますか?

きっと多くの人は、「こんなことを言ったら、叱られるのでは・・・」「否定されるのでは・・・」「何と言われるだろう・・・」と不安に思い、言いたいことを、言えずにいるのではないでしょうか。

とくに中学生、高校生の年代では、周囲の目を気にする傾向が強いと言われているため、相手にどう思われるかを気にして、言いたいことが言えない、周囲に相談できない、という人が多いようです。

そこで今回は、『アサーティブ』という、上手に「自己主張」するためのコミュニケーション方法について紹介します。

「自己主張」と聞くと、なんだか自己中心でわがままなイメージをもつ人もいるかもしれませんが、自己主張する、という行為は、誰にでも平等に与えられた「権利」です。

ぜひ、この機会に、上手な自己主張の方法について知ってもらえたらと思います。

アサーションとは、どんな対話のスキル?

アサーション(assertion)というコミュニケーション理論は、1950年代にアメリカで生まれました。

とくに1960年代から1970年代のアメリカにおいて、黒人や女性の権利を主張する人権運動が活発になる中、抑圧されてきた人たちが、適切に自己主張し、声をあげる方法として発展したもので、アメリカの心理学者や臨床家がアサーションの理論とスキルを研究し広めたことにより世界的に知られるようになりました。

アサーションが日本で取り入れられるようになったのは30年ほど前と言われています。 アサーションができている状態を「アサーティブ」といい、アサーティブな表現とは、自分の気持ちや考えを、その場にふさわしい方法で表現できることです。

アサーションは、自分も、相手も、大切にすることが基本で、自分の主張は抑圧せずに行いますが、そのときには相手を傷つけない「私も、あなたもOK」というコミュニケーションをとるのが特徴です。

相手の主張を否定したり、自身の主張を無理に押しつけたり、我慢したりせずに、お互いの意見を尊重しあってより良い結論にもっていくことが、このコミュニケーション方法になります。

アサーションには「3つの自己主張」タイプがある

アサーションは、自分の考えや気持ちを、我慢せずに上手に相手に伝える方法です。
アサーションの自己主張の仕方には、3つのタイプがあります。

①ノンアサーティブ(非主張的)
②アサーティブ(適切な主張)
③アグレッシブ(攻撃的)


それでは、それぞれのタイプの自己主張の仕方を詳しく解説しますので、あなた自身はどのタイプの自己表現が多いか、あなたの親や友達、顧問の先生やコーチはどのタイプかなど、自己理解、他者理解を深めるための参考にしてみてください。

ノンアサーティブな自己主張

ノンアサーティブな自己主張は、「あなたはOK。私はOKではない」というコミュニケーションです。

ノンアサーティブな人は、自分の意見や感情をうまく表現できない、伝えることができないタイプで、相手を優先するのが特徴です。他人の要望や意見にノーと言えず従ってしまい自分の気持ちを抑えがちなので、自分を優先せず、他人のニーズを優先することが多くなります。

<ノンアサーティブな例>

  • 誰かに理不尽なことを言われたり、頼まれたりしても、黙って我慢する
  • 質問されたことに対し、本音や自分の意見をはっきり答えられない
  • 言いたいことや相談したいことがあっても、相手がどう思うかを気にして言えない

ノンアサーティブなタイプは、相手を思いやる気持ちが強かったり、相手にどう思われるかを気にしすぎて自己主張することに慣れていないので、他人に対する不満を表現できず、我慢してしまう、受け入れてしまう傾向があります。

アサーティブな自己主張

アサーティブな自己主張は、「あなたはOK。私もOK」という相手も自分も否定しないコミュニケーションです。

アサーティブな人は、我慢したり、押し付けたりせず、自己主張しながらも他人の考えや意見を尊重できるタイプです。自分の意見や感情をはっきりと表現し、他人と争わず円滑なコミュニケーションをとることができます。

<アサーティブな例>

  • 自分の意見を大切しながら、異なる他人の意見を聞く
  • 自分にとって不快なことは、相手に素直に伝える
  • 自分したくないこと、断りたいことに対して、ノート言える

アサーティブなタイプは、自分をありのままに表現することができ、他人と良好な関係を築きやすい傾向があります。部活生がアサーティブなコミュニケーションを身につけることは、家族や友達、先生や部活の顧問・コーチに自分の考えや気持ちを上手に伝えるときに役立つ重要なスキルです。

アグレッシブな自己主張

アグレッシブな自己主張は、「あなたはOKではない。私はOK」という相手を否定し自分を正当化するコミュニケーションです。

アグレッシブな人は、必要以上に自己主張し、他人を無視する、攻撃する傾向が見られます。アグレッシブな人は、自分の欲求や意見を他人に押し付け、他人も自分と同じく、自分の意見や感情を伝える当然の権利を無視します。

<アグレッシブな例>

  • 攻撃的な言葉や態度で人を委縮させ、自分の考えを押し付ける
  • 議論や論争を好み、人とよく対立する
  • 自己評価が非常に高く、自分の意見や能力に自信過剰である

アグレッシブな自己主張は、対立や衝突を引き起こす可能性が高く、関係を損なうことにつながります。部活生にとって、指導者からアグレッシブな自己主張を受け続けていると、心身に悪影響を及ぼすこともありえます。

アサーティブを使う・使わないは、自由に選択してOK

アサーションは、上手に自分の意見や気持ちを伝えるための大切な自己表現方法であり、誰にでも平等に与えられている「権利」です。

そして、「自己主張」には、ノンアサーティブ、アサーティブ、アグレッシブの3つの表現方法があることをお伝えしました。

では、常に「アサーティブ」な自己主張をすることが、正しいのかと言うと、そうではありません。3つの自己主張のどれを選ぶかは、その都度、自由に選択してよいのです。

例えば、あなたが練習でミスをしたとき、部活の指導者から「何をしているんだ!もっとしっかりやれ!」と厳しい口調で責められたとします。

その時、あなたは3つの自己主張の中から、どんな表現をするかを選ぶことができます。

①自己主張しない
②アサーティブに気持ちを伝える
③攻撃的に反論する

具体的には、

①の自己主張しない場合は、ミスを責められたのだとは捉えずに、「喝を入れられた」と捉え、とくに自己主張はせず、励みにする。

②のアサーティブに気持ちを伝える場合は、アサーティブな自己主張を選択し、自分の気持ちを伝えることもできます。例えば、罵倒されるようなことが度々起こっていることで、傷ついていたり、落ち込んだりしてしまっている場合には、その状況を改善するためにアサーティブな自己主張をすることもできます。

具体的には、練習が終わった後などに、「相談があるのですが」と指導者へ伝え、「私の性格かと思うのですが、あのように厳しい口調で「しっかりやれ!」と言われると、努力していない、一生懸命にやっていないと、否定されたように感じて落ち込むのですが・・・」と、「私はあなたの言葉でこう感じている」ということを伝えてみるわけです。

仮に、指導者から「自分の性格を直せ」「そのくらいで落ち込むほうがおかしい」などと否定され、その後も態度が変わらなかったとしても、「あなたが指導者の厳しい言葉で自己否定されたように感じている、落ち込む」という事実は、ちゃんと相手に知ってもらうことができますよね。

あなたの言葉で私は傷つく、落ち込む、と言われて、平気な人は、あまりいないかと思います。強気な態度をとったとしても、内心は「そんなふうに感じていたのか・・・」と気になるはずです。

アサーティブな自己主張の仕方については、事例を交えて、次の記事で、詳しく紹介したいと思います。

③の攻撃的に反論するを選択した場合は、「ちゃんとやっています!ミスすることは人間なので誰でもあります!」と言い返すことも選択肢の1つです。

ただし、このようにいくら「正論」を伝えたとしても、「伝え方」が攻撃的になってしまうと、相手は「自分を攻撃された」と捉えてしまうため、あなたの反論を「そうだよな」と素直に聞き入れてもらうことは、かなり難しいと思います。

人は、いくら正論を言われても、自分を否定する人、攻撃する人の話は、受け入れられない、拒絶してしまうという心理が働くからです。



以上、今回は、「アサーション」という、自己主張の方法を紹介しました。言いたいことが言えずに悩んでいる人は、次回の記事もあわせて参考にし、上手に自分の意見や気持ちを伝えたり、断ったりできるようになってくださいね。

このスキルは、社会人になったとき、会社の人間関係でストレスを避けるうえでも役に立ちますよ。

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